お酒の在庫を別の倉庫に置くには?酒類蔵置所設置報告書と倉庫でできないこと

お酒の在庫を別の倉庫に置くには?酒類蔵置所設置報告書と倉庫でできないこと

行政書士が解説

お店や事務所が手狭になった、ネットショップの発送を任せたいなどの理由で、お酒の在庫を別の倉庫や物流代行(発送代行)の会社に置きたいという方は多いと思います。
結論から言うと、倉庫ごとに新しい免許を受ける必要はなく、税務署に「酒類蔵置所設置報告書」を出せば足ります。
ただし、倉庫で注文を受けたり代金を受け取ったりはできません。注文の受付は、免許を受けた「販売場」(免許を受けた事務所や店舗)で行います。
この記事では、別の倉庫にお酒を置くときの手続きと、倉庫ではできないことを、酒税法と国税庁の通達・Q&Aをもとに解説いたします。

1.別の倉庫や物流代行の倉庫にもお酒を置けます(蔵置所)

倉庫に保管されたお酒

①販売場以外でお酒を保管する場所が「蔵置所」です

ポイント:倉庫には免許ではなく報告が必要です

免許を受けた販売場とは別に、販売するお酒を保管しておく場所を「蔵置所(ぞうちしょ)」といいます。
蔵置所は販売場ではないので、倉庫ごとに新しく免許を受ける必要はありません。
そのかわり、酒税法第47条第4項・酒税法施行令第54条の2にもとづいて、倉庫の所在地や名称などを税務署に報告することが求められています。

第五十四条の二
法第四十七条第四項に規定する政令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 酒類の販売業者が販売の目的で所持する酒類を貯蔵する場所(保税地域に該当する場所及び酒類の販売業免許を受けた販売場を除く。)の所在地及び名称
(第二号 略)

酒税法施行令(e-GOV法令検索より引用)

②物流代行の倉庫も蔵置所にできます

ポイント:契約で自社のお酒を区別して管理し、帳簿で特定できることが条件です

物流代行の倉庫のように、いくつもの会社の荷物を預かり、荷主ごとの置き場所(区画)が決まっていない倉庫について、国税庁の法令解釈通達では次のように定めています。

2 酒類の蔵置所の報告を求める場合の取扱い
(前文 略)
((1)から(6)まで 略)
(7) 酒類を蔵置する場所が酒類の販売業者ごとに固定されていない倉庫等に蔵置所を設置しようとする場合において、倉庫業者等との契約により酒類の販売業者ごとに酒類が管理され、記帳等により酒類の販売業者ごとに蔵置している酒類を特定することができる場合には、当該倉庫等を蔵置所とすることとして差し支えない。

国税庁法令解釈通達(酒税法第47条 第4項関係)より引用

つまり、物流代行の会社との契約で自社のお酒が区別して管理され、帳簿などで特定できるなら、その倉庫を蔵置所にできます。
ただし、国税庁のQ&Aでは、蔵置所の管理は酒類販売業者が直接行い、販売場の一組織でなければならないとされています。他社の倉庫でこれをどう満たすか(契約や記帳の方法)は、所轄税務署に確認しておくと安心です。
物流代行の会社を選ぶときは、預けたお酒の入出庫を他社の分と区別して記録してもらえるかを確認しておきましょう。お酒の出し入れの帳簿は、倉庫と販売場の両方に備える決まりになっているためです。

2.酒類蔵置所設置報告書の出し方

税務署に報告書を提出する

①提出先と提出の時期

ポイント:倉庫にお酒を置き始める前に、販売場の所轄税務署へ

  • 宛名:販売場の所轄税務署長
  • 提出する窓口:販売場の所轄税務署(倉庫の所在地が別の税務署の管轄なら、倉庫の所轄税務署に出してもかまいません)
  • 提出の時期:蔵置所を設置しようとするとき(倉庫にお酒を置き始める前)
  • 提出の方法:e-Taxで提出するか、書面を税務署に持参・郵送

様式(正式名は「酒類蔵置所設置・廃止報告書」)は国税庁の「酒類蔵置所の設置・廃止の手続き」のページからダウンロードできます(報告書(PDF)・記載要領(PDF))。

②報告書に書くこと

ポイント:倉庫での管理方法も書きます

報告書には、主に次のことを書きます。

欄書く内容
報告者・区分会社の名称・住所・代表者、「設置」か「廃止」か
蔵置所を設置する販売場販売場の所在地・名称・電話番号
設置する蔵置所倉庫の所在地・名称
設置年月日・設置する期間設置する日。使う期間が決まっているときだけ満了日を書きます(その日に廃止の報告をしたものとみなされます)
蔵置する酒類の範囲倉庫に置くお酒の品目など
蔵置能力・販売場からの距離倉庫に置ける量、販売場からの距離と所要時間
設置の目的・その他の参考事項倉庫を置く理由と、倉庫でのお酒の管理方法(物流代行なら、契約で自社のお酒を区別して管理・記帳してもらうことなど)

使うのをやめるときは、同じ様式で区分を「廃止」にして報告します。
倉庫を移すときは、移転前の倉庫を「廃止」、移転後の倉庫を「設置」として書いて報告します。
報告した内容に変更があったときも、速やかに報告し直します。

③別の倉庫の報告は、免許を受けたあとの手続きです

ポイント:申請書の配置図に書くのは、販売場と一体の倉庫です

これから酒類販売業免許を申請する方の中には、倉庫がまだ決まっていない方もいると思います。
国税庁の免許申請の手引(一般酒類小売業・通信販売酒類小売業・酒類卸売業)では、免許の申請書(次葉2「建物等の配置図」)に明示するよう求めているのは、申請する販売場と一体として機能する倉庫等です。
一方、免許を受けた販売場と異なる場所に倉庫等を設ける場合の酒類蔵置所設置・廃止報告書は、手引の中で酒類販売業者の申告義務の一つとして挙げられており、倉庫を設ける前に「あらかじめ」出すものとされています。
そのため、別の倉庫は、免許の申請とは別に、倉庫が決まった段階で報告する流れになります。
申請の時点ですでに倉庫の予定がある場合の扱いは、申請先の税務署に確認しておくと安心です。

3.倉庫(蔵置所)でできないこと

倉庫でできないことを確認する

①注文の受付や代金の受け取りは販売場で行います

ポイント:倉庫は販売場ではなく、お酒を置いておくだけの場所です

国税庁のQ&Aでは、蔵置所について次のような制限や決まりがあると説明しています。

  • お酒の注文を受けること(受注)や代金の受け取りはできません。
  • 倉庫では、出荷伝票など販売に関する伝票も作れません。
  • 仕入れの注文や仕入れ代金の支払いもできません。ただし、販売場で注文したお酒を倉庫に直接入荷させるのはかまいません。
  • 倉庫の管理は自社(販売場)が直接行い、倉庫は販売場の一組織という位置づけになります。
  • 販売場と間違われるような看板は出せません。
  • お酒の出し入れの帳簿は、倉庫と販売場の両方に備え付け、いつでも分かるように記帳します。

※出典:国税庁「お酒に関するQ&A(よくある質問)」【蔵置所】

②倉庫から購入者へ直送することはできます

ポイント:注文は販売場で受け、倉庫には出荷の指示だけを出します

蔵置所とはどのような場所かについて、国税庁の法令解釈通達では次のように定めています。

2 酒類の蔵置所の報告を求める場合の取扱い
(前文 略)
(1) 蔵置所とは、課税済の酒類を単に蔵置する場所をいい、複数の酒類販売場を有する酒類の販売業者が、一括して酒類の仕入れを行い自己の各販売場に移送するため、又は自己の各販売場からの指示に基づき消費者等へ配送するための作業場所(配送センター等)を含む。
((2)以下 略)

国税庁法令解釈通達(酒税法第47条 第4項関係)より引用

通達が例に挙げているのは複数の販売場を持つ業者の配送センターですが、蔵置所はあくまで「お酒を単に置いておく場所」です。
たとえばネットショップなら、注文は販売場(事務所など)で受け、倉庫に出荷を指示して、倉庫から購入者へ直接送る形であれば、倉庫はお酒を置いて出荷するだけの場所にとどまり、注文の受付などの販売は販売場で行っていることになります。
反対に、倉庫で注文を受けることはできません。国税庁の手引でも「免許を受けていない倉庫等で酒類の販売契約の締結(受注行為)を行うことはできません」とされています。
法令解釈通達では、販売場以外の場所について次のように定めています。

6 販売場の取扱い
(1) 製造者又は酒類販売業者が、その製造場又は販売場以外の特定の場所において、酒類の販売契約の締結を継続的に行う場合又は酒類の販売代金の受領及び酒類の現物の引渡しを継続的に行う場合においては、その場所について酒類の販売業免許が必要であるから留意する。
(注) 単に注文を受けるに過ぎないと称する場合であっても、その取引の形態、内容、当事者の意思等を実質的に判断し、契約の締結に該当するかどうかを判定する。
((2)以下 略)

国税庁法令解釈通達(酒税法第9条 第1項関係)より引用

このように、酒税法では、継続して販売をする場所(販売場)ごとに免許が必要とされています。

物流代行の会社によっては、送り状の発行や受注・決済の代行まで引き受けているところもあります。
Q&Aでは蔵置所で出荷伝票等を作れないとされているため、送り状を倉庫側で発行してもらう運用でよいかなど、作業の分担は報告書を出す前に所轄税務署に確認しておきましょう。

通信販売酒類小売業免許の申請のポイントや、免許を受けたあとにしなければならない手続きは、下記の記事で解説しております。

4.まとめ

以上、お酒の在庫を別の倉庫や物流代行に置くときの手続きについて解説いたしました。
販売場以外にお酒を置く倉庫は「蔵置所」となり、免許ではなく、税務署への酒類蔵置所設置報告書で足ります。
報告書は、倉庫にお酒を置き始める前に販売場の所轄税務署へ出します(免許の申請とは別の手続きです)。
物流代行の倉庫でも、契約で自社のお酒が区別して管理され、帳簿で特定できれば蔵置所にできます。
ただし、注文の受付や代金の受け取り、販売の伝票の作成は販売場で行い、倉庫には出荷の指示だけを出すようにしてください。

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